なぜ「炭水化物は太る」と言われるのか?
このようなイメージが広まった背景には、以下のような要因があります。
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糖質制限ダイエットの流行により、「炭水化物=敵」という印象が定着
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ご飯・パン・麺類など高カロリーな炭水化物食品が多いため
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「インスリン(血糖値を下げるホルモン)=脂肪を増やす」と誤解されている
しかし実際には、インスリン分泌=即脂肪増加というのは誤解であり、
カロリー過多や栄養バランスの崩れこそが、太る最大の要因です【1】。
科学的にはどうなのか?炭水化物=太るは誤解
炭水化物を摂ったからといって太るわけではありません。
体重が増える原因は、総摂取カロリーが消費カロリーを上回ることです。
実際、ハーバード大学公衆衛生大学院の食事ガイドラインでは、
「全粒穀物や野菜・豆類などの炭水化物は、体重コントロールにプラスの影響を与える」と明記されています【2】。
また、糖質の吸収速度を示す「GI値」や、血糖値の安定性を考えた摂取方法(低GI食品、食物繊維の併用など)も
体脂肪の蓄積リスクを減らすことが研究で報告されています【3】。
炭水化物を抜くことで起こるリスク
炭水化物を極端に制限すると、次のようなリスクが考えられます。
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筋肉量の減少(炭水化物が足りないと、筋肉を分解してエネルギーに変える)
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リバウンドしやすくなる(代謝が落ちる、長く続けられない)
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集中力の低下や疲れやすさ(脳の主要なエネルギー源が不足)
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食物繊維・ビタミン不足(特に主食に含まれる栄養素が欠ける)
厚生労働省も、日本人の食事摂取基準2020年版の中で、
「炭水化物はエネルギー摂取の50〜65%を占めるべき」と明記しています【4】。
賢い炭水化物との付き合い方
炭水化物は「悪者」ではありません。
抜くのではなく、選び方と摂り方を工夫することが大切です。
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精製度の低い炭水化物(玄米・オートミール・全粒粉など)を選ぶ
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体重×3〜5g/日を目安に摂取(例:60kgの人で180〜300g/日)
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朝・昼中心に摂り、夜は控えめに調整する
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たんぱく質や脂質と一緒に食べると、血糖値の急上昇を防ぎやすい
これらは国際的な研究や食事ガイドラインでも繰り返し推奨されている基本です【2】【3】。
結論:炭水化物は「太る原因」ではない
「炭水化物を食べると太るから、抜いた方がいい」と思っている方は少なくありません。
しかし、炭水化物そのものが太る原因ではないことが、多くの研究で明らかになっています。
重要なのは「食べすぎ」「質の悪い炭水化物の摂取」「タイミンや偏り」であり、
むしろ炭水化物は、健康的なダイエットや筋肉の維持に欠かせない栄養素なのです。
パーソナルトレーニングE.Sとしての見解
E.Sでは、
「糖質を抜けば痩せると思っていたけど、だんだん痩せなくなって辞めた」
「炭水化物抜きダイエットで減量した後にリバウンドして、むしろ体重が増えた」
というお悩みを抱えた方を多く見てきました。
当ジムとして伝えているのは、
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炭水化物は身体を動かすことに必要な“燃料”なのでゼロにしない
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適切に摂れば筋肉を守り、代謝を挙げてくれたり、活動量を増やしてくれる
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炭水化物の「食べ過ぎに」は注意。食べ過ぎたとしても「動いて燃焼させるサイクルをつくる」ことが大切。
特に運動をしている方にとって、炭水化物は身体を動かすエネルギー源として欠かせません。
“抜く”のではなく、“うまく使う”ことがポイントです。
参考文献
1.Poortmans(ポートマンス)ら(ベルギー・ブリュッセル自由大学)/2000年発表
アスリートを対象に、たんぱく質を多く摂取しても腎機能に悪影響が見られなかったという研究
[原題]Poortmans JR, Dellalieux O. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2000.
2.Antonio(アントニオ)ら(アメリカ・NSU)/2016年発表
非アスリートに高たんぱく食を長期間与えても、健康に問題はなかったという研究
[原題]Antonio J, et al. J Int Soc Sports Nutr. 2016.
3.Antonio(アントニオ)ら/2018年発表(上記の長期追跡研究)
1年間の長期的な観察でも、腎機能に悪影響は見られなかったとする研究
[原題]Antonio J, et al. J Nutr Metab. 2018.
4.Phillips(フィリップス)ら(カナダ・マクマスター大学)/2011年発表
アスリートや筋トレをする人における「最適なたんぱく質量」について解説したレビュー論文
[原題]Phillips SM, et al. J Sports Sci. 2011.
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