なぜ「有酸素運動で筋肉が落ちる」と言われるのか?
この話が広まった背景には、以下のような要因があります。
・ボディビルやフィジーク競技などで、減量期に「有酸素=筋分解」と言われることが多い
・長時間の有酸素運動がカタボリック(筋肉の分解)状態を引き起こすという説
・SNSなどで「筋トレ派 VS 有酸素派」のような対立構造ができてしまっている
しかし、これはすべての人に当てはまる話ではありません。
科学的に見て有酸素運動は筋肉を減らすのか?
■ 有酸素運動自体は筋肉を減らさない
2020年のレビュー研究(Schoenfeldら)によると、
有酸素運動単独での筋量低下は確認されていないという結果が報告されています【1】。
むしろ、有酸素運動は心肺機能の向上や脂肪燃焼において有効であり、
筋トレと併用することで、より効率的な体づくりが可能とされています。
■ 落ちるとすれば「栄養不足」や「やりすぎ」が原因
・長時間・高頻度での有酸素運動(例:1日90分以上)
・食事制限によるエネルギー不足
・たんぱく質の摂取が足りていない
こうした条件が重なると、体はエネルギー源として筋肉を分解してしまう可能性があります。
特に空腹状態での長時間ランニングなどは、注意が必要です。
■ 筋トレと組み合わせればむしろ代謝アップにつながる
有酸素運動だけでなく、並行して筋トレを行うことで筋肉量を維持しながら脂肪を減らすことが可能です。
有酸素と筋トレを組み合わせたプログラム(Concurrent Training)は、
ボディメイクにも健康維持にも効果的という研究も増えています【2】。
筋肉を減らさずに有酸素を取り入れるには?
以下のポイントを意識すると、筋量を維持しながら有酸素運動を行うことができます。
・有酸素運動は1回20~30分程度でも効果がある
・空腹時の長時間ランニングは避ける
・筋トレ後に10〜20分の軽めの有酸素(ウォーキングやバイク)を取り入れる
・たんぱく質をしっかり摂る(目安:体重×1.2〜1.6g/日)
週3〜4回の有酸素運動でも十分な脂肪燃焼効果が期待できます。
結論
正しく行えば、有酸素運動が筋肉を落とすことはありません。
ただし、極端なやり方や栄養不足の状態で有酸素運動を続けると、筋肉量の低下につながるリスクがあるということも、研究から明らかになっています。
大切なのは、有酸素運動の「やり方」と「目的のバランス」です。
e.sとしての見解
パーソナルトレーニングE.Sとしては、
「筋トレをしてても有酸素運動はした方が良いの?」というご相談をよくいただきます。
その際にお伝えしているのは、
-
ボディビルの大会などを目指していないのであれば、体脂肪の減少、心肺機能の向上、心身の健康の為にするべき。
-
ただし、有酸素運動があまり好きでない方は、筋トレが生活に定着してきてからスタートするでも良い。有酸素運動が憂鬱に感じ、筋トレすることも億劫になってしまっては元も子もない。
-
買い物ついでや、お出かけついでに多めに歩くだけでもOK。
という事をよくお伝えしています。
「筋肉が減るから有酸素はNG」と避けるのは、一般の方にとっては必要ないと考えています。
わたしも含め、普段デスクワークや、車での移動が基本の方は、とにかく運動量を確保することが大切です。
参考文献
1.Schoenfeld(ショーンフェルド)ら(アメリカ・レーマンカレッジ)/2020年発表
→ 有酸素運動と筋肉量の関係を整理したレビュー論文
[原題]Schoenfeld BJ et al. Concurrent training and muscle hypertrophy: science and application. Strength Cond J. 2020.
2.Wilson(ウィルソン)ら(テキサス大学)/2012年発表
→ 筋トレと有酸素運動を併用した場合の効果を分析した研究
[原題]Wilson JM et al. Concurrent training: a meta-analysis examining interference of aerobic and resistance exercises. J Strength Cond Res. 2012.
コメントをお書きください