「プロテイン腎臓に悪い」説はどこから来たのか?
この話は、以下のような背景から広まったと考えられます。
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腎疾患の方にはたんぱく質制限がある
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クレアチニンや尿素窒素など、腎機能の指標にたんぱく質が関わる
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昔の動物実験で、極端な高たんぱく食により腎臓に負担がかかったという報告がある
ただし、これらはすでに腎臓に問題がある方や特殊な条件下の話であり、
健康な一般の人に当てはめるには無理があります。
科学的な研究ではどう言われている?
■ 健康な人における高たんぱく摂取の影響
Poortmans(ポートマンス)ら(ベルギー・ブリュッセル自由大学)/2000年発表
・アスリートが高たんぱく食(最大2.8g/kg/日)を摂っても腎機能に悪影響はなかった
[原題]Poortmans JR, Dellalieux O. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2000.
Antonio(アントニオ)ら(アメリカ・NSU)/2016年発表
・非アスリートが長期間高たんぱく食(最大3.4g/kg/日)を摂取しても健康上の問題はなかった
[原題]Antonio J, et al. J Int Soc Sports Nutr. 2016.
Antonio(アントニオ)ら/2018年発表(上記の長期追跡研究)
・1年間の継続的な高たんぱく摂取でも腎機能に影響なし
[原題]Antonio J, et al. J Nutr Metab. 2018.
→これらの研究から、健康な方においてはプロテインを多めに摂っても腎臓に問題は生じないと結論づけられています。
注意が必要なケース
・慢性腎臓病(CKD)の診断を受けている方
・糖尿病や高血圧があり腎機能に影響が出ている方
・医師からたんぱく質制限の指導を受けている方
このような方は、必ず医療専門家の指導のもとで摂取量を管理する必要があります。
1日にどれくらいのプロテインなら安全?
一般的な目安:体重 × 1.2〜2.0g/日
厚生労働省の推定平均必要量:男性 約60g、女性 約50g
筋トレをしている方でも 体重 × 2.0g/日 までは問題ないとされています。
結論
健康な人が適量のプロテインを摂取しても、腎臓に悪影響があるという科学的な根拠はありません。
一方で、もともと腎機能に問題がある方が過剰に摂取した場合には、悪化リスクがある可能性が指摘されています。
つまり、健康な方であれば、適量のプロテイン摂取はまったく問題ありません。
むしろ、筋肉量の維持・増加、健康促進のためには、不足している人の方が多いのが現実です。
パーソナルトレーニングE.Sとしての見解
当ジムでも、
「プロテインは身体に悪いのでは?」「運動してないのに飲むと太るのでは?」と不安を持つ方が少なくありません。
しかし実際には、
・食事だけで必要なたんぱく質を満たせていない方が多い
・適量であれば筋肉量の維持・回復・代謝向上にとても有用
・ただし、プロテインはあくまで“栄養補助食品”。無理に飲む必要はない。
特に、筋肉量が落ちやすい中高年層や、運動初心者の方ほど、
食事内容+必要に応じたプロテイン活用が健康づくりに有効だと考えています。
参考文献
1.Poortmans(ポートマンス)ら(ベルギー・ブリュッセル自由大学)/2000年発表
アスリートを対象に、たんぱく質を多く摂取しても腎機能に悪影響が見られなかったという研究
[原題]Poortmans JR, Dellalieux O. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2000.
2.Antonio(アントニオ)ら(アメリカ・NSU)/2016年発表
非アスリートに高たんぱく食を長期間与えても、健康に問題はなかったという研究
[原題]Antonio J, et al. J Int Soc Sports Nutr. 2016.
3.Antonio(アントニオ)ら/2018年発表(上記の長期追跡研究)
1年間の長期的な観察でも、腎機能に悪影響は見られなかったとする研究
[原題]Antonio J, et al. J Nutr Metab. 2018.
4.Phillips(フィリップス)ら(カナダ・マクマスター大学)/2011年発表
アスリートや筋トレをする人における「最適なたんぱく質量」について解説したレビュー論文
[原題]Phillips SM, et al. J Sports Sci. 2011.
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