はじめに
「ファスティング(断食)」は、近年SNSでも話題の健康法です。
食べないことで体がリセットされる、オートファジーが活性化する——そんな言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
しかし、断食は本当に健康に良いのでしょうか?科学的な研究をもとに整理してみます。
断食とは?
断食にはいくつかの方法があります。
代表的なのは「16時間断食(16:8法)」や「5:2ダイエット(週2日は摂取カロリーを抑える方法)」などです。
完全に何も食べないわけではなく、一定の時間だけ食事を制限する「時間制限食(Time-restricted feeding)」というスタイルが主流になっています。
科学的に確認されている効果
① 代謝の改善
一部の研究では、断食がインスリン感受性を高め、血糖値のコントロールを改善する可能性が報告されています。
特に、肥満や2型糖尿病予備群の人において、体脂肪の減少や血圧低下が見られたとする研究があります。
② オートファジーの活性化
断食中にエネルギーが不足すると、細胞が自らの老廃物を分解・再利用する「オートファジー」という仕組みが働くとされています。
これは細胞のメンテナンス作用とも言われ、老化防止や病気予防への応用が期待されています。
ただし、人間での臨床研究はまだ少なく、現段階では「可能性がある段階」にとどまります。
③ 精神的なリフレッシュ
断食によって「食への依存」が一時的にリセットされ、集中力や自己コントロール感が高まるという報告もあります。
断食における注意が必要な点
① 栄養不足・筋肉減少
食事を抜くことで一時的に体重は減りますが、筋肉量の減少を招く場合があります。
また、必要な栄養素が不足すると、代謝が下がりリバウンドのリスクも高まります。
② ホルモンバランスの変化
特に女性では、長期の断食により月経周期が乱れたり、ストレスホルモン(コルチゾール)が上昇したりするケースも報告されています。
③ 長期的データの不足
多くの研究は数週間〜数か月の短期試験であり、長期的な安全性や持続効果はまだ明確ではありません。
日本人の生活に合う“ゆる断食”の考え方
日本人の生活スタイルに合う断食としては、**「時間を区切るタイプの断食」**がおすすめです。
無理に食事を抜くのではなく、「食べる時間を短くする」ことで体を休ませる方法です。
たとえば——
16時間断食(16:8法)
→ 1日のうち16時間は食事を摂らず、残りの8時間で食べる。
朝食を遅らせて昼と夜の2食にするだけでも、自然に実践できます。
夜断食(夕食を早めるスタイル)
→ 夕食を18〜19時までに済ませ、翌朝まで何も食べない。
睡眠中に内臓をしっかり休ませ、翌朝の消化吸収をスムーズにします。
週1回の軽い断食デー
→ 週末などに1食または半日だけ固形物を控え、水やスープで過ごす方法。
内臓をリセットし、食欲のコントロールを整える目的で行います。
重要なのは、**「無理をせず、計画的に取り入れること」**です。
長期間の断食や、仕事・運動との両立が難しい過度な方法は避け、
生活リズムに合った範囲で“食べない時間”をつくることが、続けやすく安全です。
E.Sとしての見解
E.Sとしては、基本的に断食はおすすめしていません。
その理由は、以下のように「一時的な効果」と「続けにくさ」にあります。
・一時的な断食で落ちた体重は、食事を戻すとほとんどが元に戻ってしまう
・長時間の空腹に耐えられる人は非常に少なく、継続が難しい
・もし長時間の空腹に耐えられるほどの忍耐力があるなら、そもそも運動や食事管理が継続できているはず
つまり、断食は継続できる習慣づくりには不向きです。
短期間での変化を求めるよりも、長期的に続けられる食生活を優先しています。
とはいえ、状況によっては「実行してもいい」ケースもあります。
・どうしても目標体重を達成したくて、あと一歩のところまで来ているとき
・食べすぎや“爆食”のリズムを一度リセットしたいとき
・食生活を見直す“きっかけ”として短期的に取り入れたいとき
このように、断食でダイエットを終わらせようとするのではなく、「効果は一時的と理解した上で、仕上げやリセットして使う」なら、一定の意味はあります。
ただし、無理をして体調を崩すほどの我慢や極端な方法は避け、必ず安全な範囲で行うことが大切です。
参考文献
Longo, V.D. & Panda, S. (2016). “断続的断食と時間制限食の健康効果に関するレビュー” — Cell Metabolism
➡ 食事時間制限による代謝改善と疾病リスク低下の可能性を報告。
Mattson, M.P. et al. (2017). “Intermittent Fasting and Human Metabolic Health” — New England Journal of Medicine
➡ インスリン感受性の改善や炎症マーカーの低下を確認。
厚生労働省 e-ヘルスネット「断食(ファスティング)の健康影響」
➡ 健康効果はあるものの、長期的データや安全性の検証が必要と記載。
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